教職員にスマートフォンを支給する教育委員会が増えている。業務の効率化や働き方改革につなげる目的だが、私物スマホの利用による服務事故の防止も期待される。
勤務時間が曖昧になる不安も
東京都千代田区立九段中等教育学校は昨年度、校務支援システムの入れ替えに合わせ、全ての正規教員に新型iPhone(アイフォン)を導入した。
校務システムへは、スマートフォンからもアクセス可能で「欠席連絡など保護者との情報共有がスピーディーになった」と市川淳尉主任教諭は言う。通信は月20ギガバイト(GB)まで利用でき、小型の教師用端末として使われているという。
これまで私物のスマートフォンで業務連絡をすることもあり、改善を求める要望もあった。野村公郎統括校長は「教員は学校行事や出張で校外から連絡しなければならないことが少なくない。公用のスマートフォンの導入を歓迎する声は多い」と話す。
公用スマートフォンは教員用パソコンとVPN(仮想専用線)接続でつながっており、情報漏えいなどのリスクを防いでいる。
東京都教委も本年度、都立学校5校の教員にAndroid(アンドロイド)を貸与し、メールやチャットの有効活用を検証している。都教委の担当者は「学校ごとにアプリケーションの有効な使い方や利用のルールを検証してもらい、来年度以降の展開を考えたい」と話す。
愛知県春日井市教委はスマートフォンの教育活用も視野に2学期から導入した。
取り組むのは国の「リーディングDXスクール」指定校の小・中学校合わせて9校。通話等に必要なSIMカードは入れず、授業中、教師用パソコンで教材を提示しながらスマートフォンで子どもの学習データを確認するなどして使っている。
一方、岐阜市教委では私物のスマートフォンを業務で部分的に利用することを認めている。学校で使うコミュニケーションアプリ(Teams)のアカウントに接続し、チャット機能を利用できるようにした他、ファイルデータの共有も認めている。
情報漏えい防止のため、学習支援システムの接続には2段階認証を導入。Teamsのチャットは閲覧と編集に機能を制限し、ダウンロードはできないようにしているという。
利用している教員からは「校務用パソコンに限られていた職員間の情報交換が、個人のスマートフォンでできるようになり利便性が向上した」といった声がある一方、「時間に関係なく連絡があるため勤務時間が曖昧になる」とする課題も指摘されているという。
文科省のセキュリティポリシーのガイドラインでは、情報流出や公私データの混在などのリスクから、教師の私物スマートフォンの業務利用を控えるよう求めているが、連絡手段やカメラ撮影に使われているのが現状だ。
九段中等教育学校の野村統括校長は「公用スマートフォンの使いやすさを高めることで私物を使う教員も減ってくるのではないか」と話す。