4月に異動するたびに、新年度の計画等について教職員とこんなやりとりがある。
「この計画をこの内容で行う理由は?」と尋ねると、多くは「長年ずっとこのやり方をしています」と返ってくる。予想通りの答えと感じながら、さらにこう問う。「その中にあなたの意志・思いは入っている?」。
新年度の計画立案は重要なものであり、学校運営の肝である。にもかかわらず、このやりとりが半ば恒例になっている。
VUCA時代といわれるようになり、物事がスピーディーに進む中、いつまで前例踏襲の思考に縛られているのか。そして何より、「学校運営の一翼を担えるチャンスをどうして逃すのか! もったいない!」と寂しさを覚える。
しかしである。ひとたび私の考え方が分かると「スクラップ&ビルドしてもよいのだ」「こんなことしたい」「ここを変えたい」など、さまざまな提案が寄せられる。大事なのは、基本的な方針を明確に伝え、スイッチを押すことだ。
教職員が恐る恐る、「このアイデアを実行するには、かなりの予算が必要です。無理ですよね」と語り出したら、「諦めるな! A4紙1枚で概要をまとめ、費用を概算で出してほしい。お金は何とかする」と返す。
「コスト」を理由に、やる気を失わせてはならない。提案の実現は、教職員の「知」を引き出す絶好の機会にもなる。
こうした場面での校長の動きこそが、腕の見せどころであり、信頼関係の礎にもなる。ちなみに、過去全てのコスト対応を工夫や外部関係者の協力を得て実現してきた。
私は、いかなる時代においても「現状維持は後退」と考えている。組織にとっても個人にとっても、現状に新たなる「知」を入れて、新たなる「価値創造」することこそ、世の中に存在している意義があると考える。そのムードと実績が組織全体に広がることによって組織の活性化、組織人の職務のやりがいにつながり、未来を担う子どもたちの学びの充実、ひいては国のウェルビーイング向上につながるはずだ。